お屠蘇とは
お正月に飲む祝い酒といえば「お屠蘇」です。「お屠蘇」にはちゃんとした意味・由来があって、作り方もあります。「お屠蘇」は、一年間の邪気を払って長寿を願い正月に飲む祝いの酒で、正式なお屠蘇はお酒やみりんに5~10種類の生薬を漬け込んだ「薬草酒」になります。屠蘇の「屠」は「邪気を払う」という意味で、「蘇」には魂を目覚め蘇らせるという意味があります。つまり「お屠蘇」は「邪気を払って生気を蘇らせる」ために飲むお酒なのです。
お屠蘇に使われる生薬
お屠蘇には5~10種類の生薬が使われています。一般的によく使われる生薬としては下記のようなものがります。
生薬 効能
・白朮(ビャクジュツ) 利尿作用、健胃作用、鎮静作用
・山椒(サンショウ) 健胃作用、抗菌作用
・桔梗(キキョウ) 咳や痰を鎮める、鎮痛作用
・肉桂(ニッケイ) 健胃作用、発汗・解熱作用、鎮痙作用
・防風(ボウフウ) 発汗・解熱作用、抗炎症作用
・陳皮(チンピ) 吐き気防止
それぞれの効能を見ると、「邪気を払い正気を蘇らせる」の意味がわかりますね。
ただし、生薬的には上記の効能がありますが、お屠蘇として飲む程度では食用の範囲で、医療効果はないのだそうです。
お屠蘇の作り方
お屠蘇には正式な作り方があります。
材料
・屠蘇散
・日本酒
・本みりん
材料として、まず屠蘇散(とそさん)です。屠蘇散とは山椒(さんしょう)・肉桂(にっけい)・桔梗(ききょう)・防風などの薬草を砕いて調合したもので、お屠蘇を作る際に袋に入れ、みりんにひたして使います。年末に日本酒や本みりんを買うと屠蘇散がついてくることもあるそうです。
→屠蘇散
そして日本酒とみりん。みりんは「本」みりんを使います。普段使っている安価な「みりん」は「みりん風調味料」(アルコール1%未満で、甘みや化学調味料を加えて本みりんに味を近づけたもの)や、「みりんタイプ(発酵調味料)」(醸造はしているけれど食塩が加えられるために酒税のかからないのようなもの)です。これらは「本みりん」に比べると余分なものが入っているので味の質は落ちてしまいます。「本みりん」には米麹の酵母がもち米を分解する過程でつくられる甘みと旨みがふんだんに含まれており、そのまま飲むことができるほどおいしさがあります。
作り方とポイント
1.酒と本みりん合計300mlに、屠蘇散を浸します。
酒を多くすると辛口な仕上がりに、本みりんの割合が多いと 甘口でまろやかな味わいになります。
素材が勝負なので上質な本みりんや日本酒を選ぶことがポイントはです。
2.抽出が終わったら屠蘇散を取り出します。
屠蘇散の説明書きを参考に確認し、出来上がり時間から逆算して作り始めてください。
抽出時間が長すぎると、濁ったり沈殿物が出たりすることがあります。
抽出時間は、平均して5時間~8時間が一般的です。
お屠蘇の作法
お屠蘇を飲む前にやること
・若水(元日の朝に汲んだ、その年初めての水の意)で手を清める
・神棚や仏壇を拝む
・家族が揃ったら新年のあいさつを済ませる
・おせちを食べる前にお屠蘇をいただく
お屠蘇の飲み方
器
正式な飲み方では屠蘇器という朱塗りのお銚子と三段重ねの盃を使います。現代の一般家庭にはなかなか無いものですので家にある酒器の中で一番お正月にふさわしいものを使えば大丈夫です。
飲み方
・家族全員が東の方角を向く。
・飲む人の右側から注ぎ、飲む順番は年少者から年長者へと進めていく。(若者の活発な生気を年長者が飲み取るという意味合いと、毒見の名残だと言われています。)
・三段重ねの盃で1杯ずつ3回に分けて飲むのが正式な飲み方。略式では1つの盃に3回に分けて入れ、3回に分けて飲み干す。
・厄年の人は厄年以外の人に厄を祓う力を分けてもらうため、最後に飲む。
・飲むときには、「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱える。
一般的な作法や飲み方は上記の通りですが、地域や各家庭により差があります。
お屠蘇番外編
未成年がお屠蘇を飲むのはNGなのでしょうか。未成年者飲酒禁止法によるとお屠蘇も雑酒になるようです。子供用にはアルコールを飛ばしたみりんで作るか、盃を傾け飲んだふりをするだけでも充分です。お屠蘇を飲むことも正月の行事としては大切なのですが、お屠蘇の由来や、どういった意味のある伝統行事なのかを伝え知ることも重要。大人は日本酒、子供はジュースを飲みながらお屠蘇にまつわるうんちくを話するだけでも、めでたい正月になるんじゃないでしょうか。